診断薬の概要と市場動向を把握しよう

診断薬とは

診断薬とは患者の病状を診断するために検査で使用する薬のことであり、対外診断用医薬品や臨床検査薬とも呼ばれます。診断薬は各種生体機能の状況、罹患の有無、疾患の部位や進行の程度、治療方法の選択や治療効果、妊娠の有無、血液型等の診断に使用されます。また、人体に直接投与し、診断に役立てることができる体内診断薬も存在します。体内診断薬は投与後の組織分布や濃度の変化等を観察することにより、血流の状態や臓器の機能評価、組織異常の把握等が可能です。

診断薬を製造・販売するには厚生労働大臣の承認を得なければならず、開発には2~3年の基礎研究期間が必要です。基礎研究においては診断標的の検討、新規物質の合成、実験動物による検証等が行われます。次は半年から1年程度かけて、試験方法や測定方法を確立させなければなりません。その後、行政へ製造販売承認申請を行う際のデータを取得し、薬事申請の承認を受ければ、製品として販売することが可能となります。

近年の診断薬における開発動向

2018年7月時点において医薬品医療機器総合機構(PMDA)の発足後に承認された体内診断薬は37品目です。この中でも特に汎用性が高いPET用薬剤です。PET診断は、CTやMRIなどの身体構造を画像で検査する方法とは異なり、細胞の動きを断層画像で確認し、診断を行う方法です。PET診断に用いられる薬剤である「18F-FDG」はフッ素—18でグルコースを標識するものであり、糖の代謝が活発というがん細胞の性質を活かし、活発ながん細胞を可視化することが可能です。また、「フロルベタピル,フルテメタモル」は2017年に承認された比較的新しいPET用薬剤です。この薬剤は脳内Aβの動きを可視化し、アルツハイマー病の診断に貢献します。

また、近年は低毒性・かつ被ばくリスクの低い蛍光特性を利用した診断薬の開発が進んでいます。その一つがアミノレブリン酸を用いた薬剤です。アミノレブリン酸は対外から投与されると、正常な細胞では速やかに代謝がなされるのに、がん細胞では蛍光物質が蓄積され、光線を当てると赤色に光ります。このため、手術時、術者は腫瘍組織の視認がしやすくなるのです。

また近年、がん細胞に反応して蛍光を発するプローブも開発されました。この薬剤は他の薬剤と異なり、対象部位に直接吹きかけてがん細胞を可視化できる点が特徴です。蛍光の通過性は約10mmが限界といわれているため、このプローブでは深部の病変を検出するのは難しいですが、手術中に病変組織を検出したいケースには適用可能です。

今後の展望

診断薬市場は、今後も成長が続く予想されています。特に市販の診断薬に対する需要は大きく成長するとみられています。例えば血糖モニタリングキットは通院回数を減らすことができることから、高齢者の利用が進むと期待されています。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響から自宅で実施できる検査を望む声も高まっており、そうしたニーズ対応した診断薬の需要も今後拡大すると期待されています。

このように今後の成長が期待される診断薬業界ですが、開発に掛かるリソースの負担は大きいため、参入する場合には市場のニーズ動向を常に把握しておく必要があるでしょう。

このため、事前のマーケットリサーチが重要ですが、自社で収集できる情報には限界があります。そうした際に役立つのが市場調査会社です。入念な市場調査を実施することにより、ビジネスの方向性を決める際に役立つ有益な情報を得られるかもしれません。もし、リサーチを検討しているのであれば、市場調査会社の活用を積極的に検討しましょう。

 

 

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