放射能除去装置の概要と動向を把握しよう
放射能とは
放射能は放射線を出す能力であり、その放射線を出す物質を放射性物質と呼びます。
放射線とはエネルギーが高く、高速で飛ぶ粒子・波長が短い電磁波の総称です。放射線は目に見えるものではありませんが、放射線物質は放射線を絶えず放出し続けることで、徐々に安定した物質へと変化するのです。
放射性物質の代表例はラジウムやセシウム、ヨウ素131などが挙げられます。放射線を長時間浴び続けると、人体にも悪影響が生じます。
放射能除去装置とは
放射能除去装置とは放射線を放出する放射性物質を取り除くための装置です。現在、原発事故が発生した福島第一原発の汚染水の浄化に利用されています。
汚染水の浄化処理においては汚染水の大部分に含まれるセシウムやストロンチウムを重点的に取り除くことができ、加えて、高圧洗浄等の処理を行うより浄化レベルを高めることが可能となっています。
一方、原子力発電所の稼働に伴い発生する高レベル放射性廃棄物における放射能除去は実現しておらず、現状は物質を個体化し、地層に埋める方法が採用される見込みです。しかし、国内処分場の確保は困難であり、高レベル放射性廃棄物を減容化させることができる装置の実現が待たれています。
放射線除去技術の動向
2018年、近畿大学において汚染水からトリチウムが含まれた部分だけ除去する技術を開発したと発表しました。
従来、水と科学的な性質が似通っているトリチウム水を分離するのは困難だと言われていました。小さな穴を多量な「多孔質体」を用いることで、汚染水とトリチウム水を効率よく分離できます。
多孔質体は加熱すれば、内部に残ったトリチウム水もきれいに回収する可能となっています。こうした技術が実用化に至れば、汚染水の容量削減に寄与するでしょう。
また直近では日本原子力開発研究機構の研究において豚の骨を使用し、汚染水に含まれるストロンチウムを吸収する手法が発見されました。
この手法によるストロンチウムの吸入量は吸収剤の20倍にも及ぶともされることや、食品廃棄物となる豚の骨を利用でき、環境にも優しい技術として注目されています。
今後の展望について
今後、放射線除去装置において、特に期待されているのは除染によって発生した土壌における放射線の低減です。
現状は除去土壌の処分はまず仮置き場や除染現場で一時的に保管し、その後中間貯蔵施設で減容化処理を行い、最終処分施設で処理されます。
しかし、除染で除去された土は放射性物質を多く含んだものであるため、いかに放射線物質を低減できるのかは大きな課題となっています。このように、放射線除去の技術はまだ道半ばでありますが、ニーズは非常に高く、今後の技術開発の進展が期待されます。