バーチャルスライドの概要と市場動向を把握しよう

バーチャルスライドとは

バーチャルスライドは、病理標本をスキャンして高画質のデジタルデータに変換したものです。病理標本をデジタル化することによって、特定箇所に絞った画像確認が容易となってり、画像の倍率が容易に変更できるなど、高い精度での観察に役立ちます。加えて、データの共有が可能や劣化・破損の恐れなく保存できる点などもメリットとして挙げられます。

なお、バーチャルスライドには2種類の撮影方式(デジタルカメラ方式とスキャン方式)に分かれており、それぞれ特徴が異なります。一般的にはスキャン方式の方が撮影速度に優れている一方、フォーカスの精度はデジタルカメラ方式に軍配が上がります。このため、どちらの性能を重視するかによってどのバーチャルスライドを選択するのか検討する必要があります。

バーチャルスライド市場の状況

バーチャルスライドが国内で初めて導入されたのは2006年頃であり、その後徐々に医療機関ので利用が進んでいます。また、この頃は海外メーカーが市場の中心でしたが、現在は国内メーカーが複数参入するに至っています。2019年には大手国内メーカーが脳や神経科学、がんなど幅広い分野で利用可能なスキャナーを発売しました。このスキャナーは、多様な観察手法・サンプルサイズに対応しており、組織の全体像や微小な細胞、物質の分布まで、自由に観察できるようになっており、対応できる領域が広がりました。

医療分野においては顕微鏡とスライドガラス標本を用いた観察が主流だった大学病院の病理分野への普及も進んでいます。また、病理学や組織学等における大学の授業内でも使用されています。これはバーチャルスライドを活用すれば、何年にもわたり標本を継続して使用可能であり、標本を用意する手間が省けるため、研究・教育目的においてはうってつけといえるでしょう。

一方、バーチャルスライドの精度を疑問視する声もあり、現状、欧米と比べると国内で使用される用途はまだ限定的です。

今後の展望について

バーチャルスライド市場は、病理医の不足や負担軽減を理由に今後も成長を続くと見込まれています。国内においても実施事例を増やすことによって、徐々に現場で信頼を得られるようになってきています。

また、東京大学医学部では病理学各論の実習において、バーチャルスライドを取り入れており、こうした実習を学んだ学生が現場に出るようになる数年後にはバーチャルスライドを活用するのが当たり前の時代になると期待されています。バーチャルスライド自体もAIの活用等によって精度は向上しており、病理や学習の現場での利用に加え、海外を中心に創薬の分野においても活用が進むと見られています。

このようにバーチャルスライド市場は成長が見込まれているものの、製品技術は常に進化を続けており、もし市場に参入するのであればその市場動向を常にウォッチする必要があるでしょう。市場動向の把握は自社だけで実施するとなると、収集できる情報にも限界があります。そういった際にはプロの市場調査会社を活用することをお奨めします。

業界に詳しい調査員が自社のリサーチのみでは難しい有益な情報の収集に努めてくれます。バーチャルスライド市場について詳しく把握されたい方は、ぜひ市場調査会社へ問い合わせてみましょう。

 

 

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