CO2回収とその市場動向について把握しよう
CO2回収とは?
CO2回収とは主に化石燃料の燃焼によって発生する二酸化炭素を大気中に排出せずに、地中や海中などに閉じ込めて貯留させること(CCS)を指します。
2008年の北海道洞爺湖サミットの首脳宣言や2011年の京都議定書の締結国会合といった国際的な場でも早くからCCSの推進について触れられており、環境対策における有効なアプローチの1つと考えられています。また、昨今ではCO2の貯蔵に留まらず、分離した二酸化炭素を再利用する活動をCCUSも注目されています。
二酸化炭素の分離・回収方法にはいくつか種類があり、ここでは代表的なものを紹介します。
■化学吸収:
二酸化炭素だけを取り除き溶解できるアルカリ性溶液と反応させることにより、分離・回収する方法。使われるアルカリ性溶液には、炭酸カリ水溶液やアミンなどがある
■膜分離:
多数の穴が開いた分離膜に二酸化炭素を含む気体を通過させ、二酸化炭素だけを分離・回収する方法。
■物理吸収:
二酸化炭素を多量に溶かすことができる液体に物理的に吸収させ、その後加熱処理を行う方法。
■物理吸着:
二酸化炭素を含む気体を吸着剤に接着させることにより、二酸化炭素を物理的に吸着し、後に温度差や圧力差を利用して分離・回収する方法。
CO2の貯蔵先 分離・回収後の二酸化炭素の貯蔵先としては地中が挙げられます。化石燃料や地下水を長期間貯留し続けてきた強固な地層であれば、地上に漏洩せず二酸化炭素を封じ込められると考えられています。
従来、石油井やガス井では分離した二酸化炭素を地中に送り込んでおり、こうした石油資源開発技術を活用でき、実現性が高い点も地中貯留に注目が集まる理由と言えるでしょう。なお、方法としては地下の帯水層へ注入し貯留する「帯水層貯蓄」や、地中の石炭層へ二酸化炭素を注入しメタンとともに吸着貯留する「炭層固定」などが考えられています。
一方、海底に二酸化炭素を貯留する海洋隔離といった方法も検討されています。但し、海中に二酸化炭素を送り込むことによって、生態系に影響を及ぼす可能性があるため、現状、実用化に向けた取り組みは進んでいません。
日本で行われているCCSの取り組み
海外ではすでにCCSが実用化されているケースもありますが、日本ではまだ実証段階です。日本においては2012年から北海道苫小牧市において、国内初の本格的な実証実験が開始されています。
さらに2016年からは港内の海底に二酸化炭素を貯留する作業がはじまりました。製油所から排出されたガスを二酸化炭素とその他の気体に分離し、海底深くの井戸に年10万トンスケールで貯蔵する計画です。
加えて、米国との間ではCCSに関する共同研究開発についての協力文書がかわされるなど、国際連携も進んでいます。
二酸化炭素の再利用「カーボンリサイクル」の実用化
現在のCO2回収・分離の大半は化学吸収と物理吸収によるものとなっており、天然ガスや水素の製造時に発生する二酸化炭素の除去がメインとなっています。今後は温室効果ガス対策がより求められるようになり、CO2を回収・分離するニーズはより高まると期待されています。
このため、CO2を回収・分離するための高分子膜や物理吸収液の需要が高まると予想されています。また、カーボンリサイクルについても、実証プラントが徐々に稼動を開始し、マーケットが醸成されていくとみられています。 一方、CO2の発生量が多い発電所の需要においては、再生可能エネルギーの利用により、一時期と比べるとCO2の排出が抑えられているため、CO2回収の需要がどの程度あるのか把握する必要はあるでしょう。
もし、CO2回収・分離関連市場への参入を検討している場合には、市場調査の実施をおすすめします。専門の調査会社を利用し、市場調査を行えば、多くの市場に関する情報を収集でき、参入の検討に役立つでしょう。今後の発展が期待できるCO2回収・分離関連市場に参入する場合には、市場調査会社を積極的に活用しましょう。