造影剤の概要と市場動向を把握しよう
造影剤とは
造影剤は特定の臓器を強調したり、画像にコントラストをつけることで画像診断を実施しやすくする薬です。造影剤にはCTに使用されるヨード造影剤、胃の検査用のバリウム、MRIに用いられるカドニウム化合物等様々です。
造影剤は非常に安全性の高いものですが、副作用が生じるリスクはゼロではありません。吐き気や頭痛等の軽い副作用のほか、呼吸困難や意識障害など重篤な症状が起きる可能性もあります。但し、軽微なものを含めると副作用が起きる確率は約1~2%です。残念ながら、現在の医療技術では副作用を確実に抑える方法は確立されていませんが、病気を早期に発見するには必要不可欠な存在となっているのが造影剤です。
造影剤市場の動向
近年の造影剤市場においては、神経関連の造影剤に関する市場が拡大しています。先進国を中心とした神経疾患患者数の増加や神経関連を診断するための画像システムが普及したことなどが要因となっています。また、神経細胞や悪性腫瘍の診断に寄与するMRIベースの造影剤の使用頻度も高まっています。
国内における新たな取り組みとして、2016年に発足した量子科学技術研究開発機構では、創薬分野における産学連携を進めるために「次世代MRI・造影剤」のプロジェクトをスタートさせています。本プロジェクトに関連して2017年に行われたキックオフ国際シンポジウムでは、蛍光色素とナノ粒子を混ぜ合わせて薬剤として活用する技術等、MRI用の造影剤に関する研究成果が報告されました。
現在は、この新たな知見を活かした製品化の動きが活発です。開発中の蛍光造影剤「ASP5354」は、手術時に同一であることを見極めるのが難しい臓器や組織の可視化を実現できると見られています。この「ASP5354」は承認手続きの最中であり、2023年中の承認取得を目指しています。
この他にも造影剤の技術革新は日々進んでおり、量子科学技術研究開発機構と東京工業大学等の機関では、悪性度の高いがん細胞を感知できるナノマシン造影剤の開発に取り組んでいます。この造影剤は悪性度が高いがん細胞が多く存する腫瘍内低酸素領域の可視化を可能とするものです。腫瘍内低酸素領域は抗がん剤が効きにくく、放射線治療の効果も低いため、転移の可能性が高い領域として、兼ねてより問題視されていました。この造影剤により悪性度の高いがん細胞を発見することができれば、病状が悪化するケースを減らすことに繋がり、患者の治療に大いに役立つことが期待されています。
今後の展望や懸念点について
造影剤市場は今後も成長が続くと見込まれています。中でも大きな成長が期待されているのががん関連の市場です。世界中でがん患者数が増加しており、早期診断の必要性から造影剤の需要も高まっているためです。また地域別では人口が多く、今後がん患者が増えるアジア太平洋地域のニーズが伸びると期待されています。
このように今後も需要拡大が期待される造影剤ですが、どのようなエリア、症状をターゲットにしていくかは十分な市場調査が必要でしょう。また、競合企業の動向をリサーチすることも重要でしょう。こうした作業に役立つのが市場調査会社です。自社で得られる情報以外に有益な情報を収集できる可能性があります。現状の市場調査に不満を感じている方はこうした市場調査会社に一度相談してみるのが良いでしょう。