焼却炉の概要と市場動向を把握しよう
焼却炉とは
ごみの無害化や再資源化などを目的に、わが国では焼却処理が広く採用されています。なお、焼却とは廃棄物内の有機物を燃焼させることによって処理する方法を指し、燃焼後の廃棄物は残灰・不燃物由来のフライアッシュ、熱などに変換されます。
焼却炉は焼却処理の過程で使用される設備であり、ごみを燃やす従来の焼却炉とごみを燃やした後に発生する焼却灰などを融解する溶解炉に大きく分類されます。中でも一般的に広く普及しているのが、ストーカ式燃焼炉・流動床式焼却炉・キルン式焼却炉の3つです。
ストーカ式燃焼炉は、火格子(ストーカ)に乗せたごみを動かしながら、ストーカ下部から送り込む熱風によって焼却します。
流動床式焼却炉は下から空気を吹き込み、炉内に充填された砂を流動させ、高温の流動層の中にごみを投入することにより、焼却できるものとなっています。
キルン式焼却炉は、キルン(回転ドラム)に破砕したごみを投入し、高温の真空状態で蒸し焼きにする装置となっており、むし焼きになったごみは、熱分解ガスと熱分解カーボンに分解されます。
なお、ごみ焼却処理の流れはまずピットに運び込まれたごみを、燃焼状況を見ながら焼却炉へ投入していきます。燃焼によって発生した燃焼ガスは熱回収の処理を施した後、煙突から排出されます。一方、焼却灰は焼却ピットに集積された後、外部へ搬出する流れとなっています。
焼却炉市場の動向
近年、日系のごみ焼却炉メーカーは海外市場の販売を強化しており、EUの企業の買収など行い、世界市場における存在感が高まっています。
これは国内市場においてすでに焼却プラントが普及しており、設備の更新需要は考えられても、新設需要が伸びる可能性は低いのが実情であるためです。
海外市場においてはEUや東南アジアが有力な市場となっています。EUにおいては廃棄物の埋め立て比率を大きく削減する方針を策定しており、今後焼却炉の需要が高まると期待されています。特に英国や東欧は焼却施設の整備が進んでいないので、新設需要が高まる期待されています。
また、人口増大や経済発展が著しい東南アジアも今後の市場拡大が期待されており、特にインドネシアやタイ、ベトナムなどでの受注獲得が成長の鍵となるでしょう。この他、中国においても焼却プラントに関する大きな需要が見込まれているものの、中国は建設工程を現地企業に依頼する場合が多いため、日系企業においては収益性の問題から受注は難しい状況といわれています。
今後の展望について
経済成長に伴い、廃棄物の増加やその処理が問題となっている国が多いこともあり、焼却炉の世界市場は、成長が続くと見込まれています。
埋立地の減少の影響や非有機・人工廃棄物の処理が可能な設備の登場なども市場拡大を後押しするでしょう。加えて、移動式火格子焼却炉等の新しいタイプの需要も高まっており、こうした動きも市場規模拡大に貢献すると期待されています。
また、近年は焼却時に発生するエネルギーを発電に利用する取り組みも登場しています。
焼却によって発生する熱エネルギーの回収による環境改善、発電需要のニーズの高まりもあり、今後こうしたタイプの施設が定着していくと期待されています。
このように焼却炉の市場は拡大が期待されていますが、エリアによって求められるニーズは異なります。また、トレンドも刻々と変化しており、それらを把握した上で戦略を練らなければ、業績を拡大させることは難しいでしょう。事業を成功に近づけるためには市場調査を実施し、市場の動向に関する情報収集を行うことをまずはお勧めします。また、市場調査を行う際には、社内のリソースで行うよりも有益な情報を得られる可能性がある専門の調査会社の利用をお奨めします。