シェールガスの概要とそのリスク
シェールガスとは?
シェールガス(非在来型)とは、頁岩(シェール)という薄く割れやすい堆積岩の層から採掘される天然ガスの一種です。天然ガスは地層の粒子の隙間に存在しており、従来は主に砂岩から採掘されていました。
砂岩は隙間が大きく、粒子の間をガスが比較的自由に移動できるため、パイプで吸い上げることが比較的容易です。一方、隙間が狭い頁岩ではガスが移動しにくいことに加え、地下2000m超の深い地層に存在するため、技術的・予算的制約から採取は困難でした。
しかし、2006年以降の採掘に関する技術革新に伴い、シェールガスを安価に採取できるようになりました。 元々、シェールガスは生産にコストがかかりすぎるため市場性が無いと言われていましたが、2000年代前半に原油価格が上昇し、それに伴い天然ガス価格(在来型)も高騰したことが影響し、以前よりも安価に採取できるようになったシェールガスは採算に見合うと判断され、採掘開発が積極的に行われるようになりました。
シェールガスの主な産出国であるアメリカでは、自国内で資源の調達が可能となり、天然ガス輸入量が減少しました。この現象はシュール革命と呼ばれ、世界規模でエネルギー事情や政策等に影響を与えました。
シェール革命による変化
シェール革命の到来は、アメリカのエネルギー事情の以外な部分に影響を与えました。代表的な影響としては、まず、原油生産量の増加が挙げられます。
これは頁岩(シェール層)からはガスと一緒に原油も採掘できるためであり、アメリカでは原油生産量が増加し、輸入量を越える水準に達しました。また、シェールガスや原油の生産量が増えたことで、天然ガス(在来型)の価格が下落したため、火力発電は石炭から天然ガスへとエネルギー源をシフトさせました。
その結果、国内で余った石炭が中国やヨーロッパ市場へ積極的に輸出されるようになりました。 また、シェール革命は原子力発電のシェア率低下にも影響を与えました。
アメリカでは、これまで原料価格の乱高下に伴う調達安定性の懸念から火力発電に代わって、原子力発電を推進してきました。しかし、シェールガスの増産に伴い、以前よりも安価にエネルギー資源を調達可能になったことや、福島の原子力発電所の事故に伴う建設基準の厳格化等もあり、原子力発電所新設計画に見直しがかかりました。
このためアメリカの電力においては今後、原子力発電の割合が低くなり、天然ガスを利用した火力発電のシェアが高くなると予想されています。
シェールガスはバラ色か?
今後の需要拡大が期待されているシェールガスですが、普及にあたって環境への悪影響が懸念されています。具体的にはシェールガスの採掘は地盤に影響を与え、地震を生じさせる可能性が高くなることや、排水の不適切な処理による水質汚染などが懸念されています。
また、採掘作業において人体に与える悪影響も大きいといわれています。このため、シェールガスの資源大国であるアメリカにおいても、ニューヨーク州などいくつかの地域はこのようなリスクを配慮し、シェールガスの採掘を禁止しており、地球環境への配慮から、シェールガスに疑問を持つ声が大きくなっています。
シェールガスは雇用創出効果や税収増などのメリットはあるものの、大きなリスクもあります。もし、シェールガス関連の事業への参入を行い場合には、市場調査を徹底的に行うことをお勧めします。