VOC処理装置の概要とその市場動向を把握しよう

H2VOC処理装置とは

VOC処理装置は工場から排出された揮発性有機化合物を捕捉・除去し、クリーンなガスを大気中に排出できるものです。VOCは有機溶剤として接着剤や塗料、印刷インキ等に使用されており、光化学スモッグの原因物質の一つだと考えられています。

大気中にVOCが存在すると光化学反応によって、地球温暖化の要因であるオゾンを生成してしまうため、大気中に放出される前にVOCを取り除く必要があります。

国は工場等が発生源のVOC排出量を削減するという目標を掲げ、2006年に施行された改正大気汚染防止法では一定規模以上の排出施設に規制を行い、かつ中小事業者を含む全てのVOC排出事業者に、創意工夫に基づく自主的な排出抑制措置を取ることを求めました。

また、VOCのうち、トルエンやキシレン、酢酸エチル等の物質は体に浴びると中毒症状が生じたり、重篤な健康被害を引き起こしたりする危険性があるため、労働安全衛生法の規制対象となっています。したがって、国ではトルエンやキシレン、酢酸エチル等の物質の排出事業者は、排出量等を把握し、その情報を提出するように定めています。

このように社会的にVOC規制・除去への必要性が高まる中で活躍を期待されるVOC処理装置ですが、導入の際は一般的に以下の手順を踏みます。

① 製造メーカーによる現場測定
② 処理システムの計画・提案
③ 設計・製造
④ 据付・試運転
⑤ アフターメンテナンス

装置の能力は大きく異なるため、目的や使用スペース等に応じてどのような装置を選ぶか検討する必要があります。

また、VOC処理装置の技術進展により、悪臭の処理を行える装置や現地での組み立て作業が不要な装置など、様々な種類が登場しています。

VOC処理技術の種類

VOCの排出を抑制する方法にはVOCの発生自体を抑制するインプラント排出抑制と、VOC処理装置の設置などによって解決を図るエンドオブパイプ対策の2種類があります。なお、エンドオブパイプ対策の主な手法は以下のようなものが挙げられます。

活性炭吸着法

発生したVOCを活性炭に吸着させて処理する方法です。吸着したVOCはまず加熱空気や蒸気を用いて追い出した後に、燃焼処理を行います。 一般的にVOCが低濃度の場合に採用される方法です。

触媒酸化法

白金等の貴金属触媒を使用して、VOCを低温で熱処理する方法であり、エネルギー効率が良く装置もコンパクトで済みます。

但し、触媒を変質させる物質が化合物に含まれていると急速に劣化する可能性もあるため、耐久力がある素材の利用や触媒の加工等、前処理を行ったりしなければならない場合もあります。

直接燃焼法

VOCをバーナーで直接燃焼し、炭素を酸化させて処理する方法です。燃焼温度が高いためVOCを効率よく分解できることに加え、装置の設置コストが低く機器のメンテナンスも簡単だというメリットがあります。 一方で窒素酸化物が発生しやすいことや、VOC濃度が低い場合、燃焼消費量の増加に繋がる点が課題となっています。

蓄熱燃焼法

VOCを含んだガスを高温下で滞留・燃焼させて、水と二酸化炭素に分解する方法です。蓄熱体(セラミックス)を用いてガス内の熱を回収しながら燃焼させるので、効率的に分解が進みます。ただし、装置が高価であることや断続運転が難しい点がデメリットです。

圧縮深冷凝縮法

コンプレッサーでVOCガスを圧縮させた後に水冷凝縮器に通して、まずVOCの一部を凝縮分離します。さらに冷凍機を用いて冷却し、凝縮したVOCを分離回収することにより、ほとんどのVOCを回収させることが可能です。また、最後に残存したVOCを活性炭で吸着させることにより、完全に処理することができます。

VOC処理の動向

国によるVOC排出規制は効果を挙げ、2010年には施策開始当時に定めた3割削減という目標を大きく上回る削減率を達成しました。

その結果、2011年以降は新たな目標は設定せず、現行の排出抑制策を継続する流れとなっています。その後も全国におけるVOC排出量の減少傾向が続いており、こうした状況を考慮すると、今後国内におけるVOC処理装置の需要はあまり期待できないかもしれません。

一方、海外においては特に中国やインドといった環境に悩む国ではVOC処理装置への需要が高まると期待されています。中国では急速な経済発展の代償として、大気汚染の問題が深刻化しており、現在政府はPM2.5等の排出削減を目標に掲げ、中長期的な取り組みを行っています。また、インドも中国と同様大気汚染が深刻であり、PM2.5等の排出基準を強化しています。

こうした海外の需要を取り込むことができれば、VOC処理装置市場において勝機を見出せるかもしれません。また、新規参入を考えている場合には、事前の市場調査が大切です。各国の環境規制や商習慣の確認はもちろん、市場規模や競合プレーヤー等の情報も把握できます。市場調査で得られた情報を活用すれば、新規参入の勝機もより高まってくるでしょう。

今後も海外を中心に成長が期待できるVOC処理装置において、新規参入や事業拡大を積極的に検討していきましょう。

 

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