産業用排水処理システムの概要を把握しよう

各産業で求められる排水処理システムとは

排水処理システムとは、自動車や食品・製薬といった各産業で発生する排水を性質や必要なレベルに応じて処理する設備を指します。排水は各事業所によって処理する水量や水質が変わってくるため、各施設に合ったシステムを採用する必要があります。

次に主な用途の排水処理の概要をみていきましょう。

 

■自動車製造の場合
自動車の製造過程では、弱酸性で重金属を含む高有機物濃度に対応した排水処理が必要となります。このため、現時点では凝集沈殿処理→膜分離型生物処理→重金属吸着処理という3つのステップにより、排水処理が行われます。塗料(水性塗料)においては高濃度成分が含まれるのが特徴です。このため、処理については凝集沈殿処理、膜分離型生物処理、難分解性物質処理の3つの方法を組み合わせて行っています。

■食品製造の場合
食品工場の廃水においては、特有の油分を含むのが特徴です。このため、生物処理と加圧浮上装置を活用し、油を分離し浄化することによって排水処理を行っています。

水処理技術市場の最近の動向

水処理技術は「ポンプシステム」「膜システム」「化学薬品」の3つの分野で構成されており、このうち排水処理設備と関係が深いのはポンプシステムや膜システムとなります。

中でも経済性に優れた装置として注目を浴びているのが温式酸化処理装置です。温式酸化処理装置では液中に含まれる有機物や還元性無機物を、液相を保ったまま酸化処理できます。

通常は水が多い廃液を処理する場合、加熱のために膨大なエネルギーが必要です。 温式酸化処理装置を利用すれば、加圧処理によって水分の蒸発を抑制しつつ水が持つ触媒作用を通じて、燃焼させる場合と比べて低い温度で焼却反応を得られるため、今後の利用拡大が期待されています。

また、途上国を中心に急速な都市化・工業化による水需要への高まりを背景に、水処理装置の需要は急激に高まっています。

特に国によっては高機能水処理プラントを増やすための取り組みを進めているところもあり、その影響による処理装置の需要拡大が期待できます。特に水不足の国においては排水処理システムにより水を浄化し、再利用するニーズは高く、需要は特に旺盛になると見込まれています。

一方、処理プラントの設置コストが高額であるため、さらなる需要拡大においては低コスト化が今後の課題となってくるでしょう。なお、水処理の技術については技術革新が進んでおり、微生物や有害な化学物質を認識し、濃度レベルを測定することも可能となっており、こうした技術の進展がさらなる需要獲得に繋がると期待されています。

水処理ビジネスの市場展望や懸念点

人口増加や都市化・工業化の進展を理由に、水処理ビジネスの市場は今後も順調に成長していくと予想されています。日本においては部品や機器の製造分野、装置の設計・施工分野、運営や保守・管理と幅広い領域に多くの企業がすでに参入しています。

一方、今後の日系企業における課題は海外展開にあるでしょう。日系企業においては海水淡水化などに用いる水処理膜の分野や、特殊な産業向けの超純水製造、ポンプといった分野で世界的にも優れた技術を持っています。加えて耐震や漏水防止、下水再生利用等の関連技術に強い点も評価されています。

一方、水処理関連のビジネスにおいてもっとも収益を生む施設の管理運営分野においては、日系企業がシェアを伸ばせていない状況です。このため、今後、日系企業が水処理ビジネスにより深くコミットし、高い収益を得るためには管理運営部門で支配力を高めていく必要があるでしょう。

こうした分野において受注を獲得していくためには、現地の水処理事情のニーズを把握し、ニーズに即した提案を行うことが重要でしょう。このため、もし海外での案件獲得を狙うのであれば市場調査会社を活用し、現地のニーズを把握することが大切でしょう。